【リワーク】感覚過敏について:「楽しむ力」を育む環境づくり

こんにちは。
 
暑さ対策していますか?非常に暑い日が続いていますので水分補給や温度調節など気をつけてください。そして謎の我慢大会をしないようにしてください。クーラーや扇風機などを活用して、生活環境を整えていきましょう。
 
さて、リワークプログラムでは「主体性」と「楽しむ力」をキーにしています。その中でも「楽しむ力」について、ある取り組みを紹介したいと思います。
 
今回の話題は【感覚過敏】についての取り組みです。
 
まずは、感覚過敏とはどのようなものなのか少し説明します。
 
感覚過敏とは特定の音や光などの刺激に反応しすぎてしまう状態のことをいいます。受け取った刺激が、脳内でうまく処理されずに、過敏(鈍麻)な反応になります。そのため、他の方と 刺激 ⇒ 反応 の仕方が異なってきます。
 
ASD(自閉症スペクトラム)などの発達障害の方によくみられる特徴です。そうでない場合にもみられます。また、どのくらい過敏なのかの度合いは個々によって違います。※逆に、刺激に対する反応が低すぎて刺激を認識できない(感じにくい)ことを感覚鈍麻とよびます。
 
感覚過敏の一部を例としてあげてみます。
 
視覚:太陽の光がまぶしすぎる。紙が白色すぎてまぶしいくて文字が読めない。
聴覚:大きい音が苦手。音程がズレてるのが不快。
触覚:雨が肌にあたると激痛がする。着るものの肌触り(チクチクが不快)。
嗅覚:特定のにおいに対する不快。
味覚:味に対する過敏さから過度の偏食になる。
 
その他にも、(痛覚)痛みがわかりにくい、(温度感覚)暑さ寒さに弱い、(前庭感覚)何もないところで転びそうになるなどがあります。
 
このような過敏さは程度の差はあれ、誰でも感じることでもあります。そのために、「我慢が足りない」「わがままをいっている」といったように捉えらることもしばしばあります。”花粉症の方に鼻水がでるのは気合が足りないからだ””マスクは甘えだ”といっても何もはじまりません。無理やりみんなと同じことをさせようとして、失敗体験を増やしてしまうこともあります。
 
 
みんなと同じことを、みんなと同じやり方で。
 
気持ちはわからなくないですが、人はそれぞれ違うのです。でも、いろいろな体験をしたいということは大切なことです。
 
 
そのために目的を達成するための【環境調整】や【手段の多様化】の視点が大切になります。
 
気合や根性ではなく、環境を整えること、ゴールにたどり着く方法を増やすことなど工夫をすることを肯定的に、楽しんでできるような環境や雰囲気をつくることが必要になります。
 
過敏な反応につながる刺激を避けることも大切な環境調整です。また、音の過敏にはノイズキャンセリング機能のついたイヤホンを活用したり、視覚にはサングラスをつけたり、嗅覚にはマスクをしたりなどテクノロジーやアイテムを活することで過敏さを軽減することができることがあります。
 
学校や職場などでも、マスクだけではなくイヤホンやサングラス、パソコンでノートをとるなど、目的を達成するための手段の多様化が受け入れやすい世の中になるといいなと思います。
 
 
そんな環境調整や手段の多様化について、サッカースタジアムでの取り組みを紹介します。
 
Jリーグの川崎フロンターレの取り組みです。先週の試合のことのなりますが、下記のようにセンサリールームを設置して、感覚過敏のある子どもたちにサッカーを生でみる楽しさ、楽しさを共有する喜びを提供しようという取り組みになります。「楽しむ力」です。「楽しむ力」を促すための環境調整です。

音楽やスポーツなどのエンターテイメントの楽しみ方はいろいろですが、その中でも、他者との共有というのは大切なことのひとつです。自宅で一人で楽しむことも出来ますが、同じ空間で、みんなで一緒に、体験や感動を共有すること。そんな楽しみもあると思います。それは、人と人をつなげていく可能性を秘めていると思います。

イングランドのプレミアリーグでも、ワトフォードをはじめとしたいくつかのチームで取り組みが進んでいます。いろいろな人がスタジアムという空間で同じものを楽しむことができるようにする。スタジアムの中には目的を達成するための環境調整や手段の多様化(センサリールームなど)によって、誰でも楽しめる可能性をひろげていく。そんな場所が、そんな取り組みが増えていくといいなと思います。
 
今回は、「感覚過敏」についてと、その対応としての「環境調整」「手段の多様化」について書いてみました。「楽しむ力」を育むため、人と人をつなげていくための場所として、サッカースタジアムでの取り組みのようなことが広がっていくことを願います。
 
8月10日(土)には、名古屋グランパスvs川崎フロンターレの試合が豊田スタジアムで行われます。試合の勝敗も気になるところですが、よりよいスタジアムづくりという点でも追いつけ追い越せですすんでいきたいですね。
 
 
それでは、また次回に。
 
 
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うつ病・不安障害などで、休職中・退職された方を対象にリワークプログラムを行っています。メンバーで支えあいながら、「主体性」「楽しむ力」を養うこと、取り戻すことをテーマに活動しています。参加をご希望の方は、診察の際に主治医にご相談ください。